知らなくていい女と男達の話

自分と他人との、

男友達、同い年、町田で

 

 
12月のはじまりだった。

 

 

随分と会ってない友人から連絡があって、町田で飲むことになった。


久しぶり、仕事はどう、彼氏は、彼女は、あの子はどうしてる、そんな他愛もない話ばかり。

 

 

お互い仕事終わりで待ち合わせたので始まりが遅く、気付けば2時。いつのまにか、かわいくなったね、おしゃれだね、そんな話になってきていた頃。

 

 

お店から出て、友人に着いていくように少し後ろを歩く。

 


「寒いし、一緒に寝よっか」

 


振り返ってそう言われたので、無言で駆け寄る。答えはイエス

そのままホテルへと向かった。

 

 

部屋に着いても、さっき居酒屋で話していた事と変わらない、なんてことない話をした。

 

ベッドに座る友人の横に座ると、頭の後ろに手を回されてキスをされる。

 

少しの愛撫のあとだったか、どうやら飲みすぎて勃たない様子。

遊んでるやつが何をやっているのかと、呆れたのを覚えている。

 


なんとまあ、不発に終わり、チェックアウトまで寝て帰ったのだった。

 

 

 

その後も何度かやりとりして、会おうかとも思ったが、なんだか気が進まなくてもうずっと会っていない。

 

 

 

よくわからない、一夜だった。

 

 

 

 

 

男、33歳、会社員、実家住まい

 

出会いはジム。

男の好きなものとかは知らない。興味がなかった。

LINEのアイコンはサッカー選手だったから、サッカーが好きだったんじゃないかなと今更思う。

 

 


お台場デートからどのくらい経っていたか、ある土曜の夜。
適当にLINEをしていて、急遽ドライブに行くということで会うことになった。すぐに車で迎えに来た男。

女は薄手の白いロンTにデニム、グレーのカーディガンを羽織って出掛けたのを覚えている。

 

お互い、ドライブなんてしないことをわかっている。


適当に話しながら、まっすぐホテルに着いた。心の中で笑ってしまう。

部屋に入るなり、またすぐに首が痛くなるキス。女にはなんの感情もないキス、あるとすれば好奇心だけ。

ベッドの上で長い前戯、今回はすんなり受け入れることができた。あっというまに終わる。
こんなものだったかと、男の横に寝転がる女。

男はすんなり事が進んだことを、心境の変化があったかな?と嬉しそうだった。見当違いだけど。

 

男の横では全然眠れなくて、早く家に帰りたかった。
何度も何度も目が覚めて、ただ携帯をいじっていた。

帰り際、自動精算機の前で宿泊代が高かったのか知らないが、カードで支払いながら「痛いなぁ」と男がつぶやいていた。聞こえないふりをした。


特に話すこともない車内。
この時はAKB48じゃなかった気がする。

 

ありがとまたねって車のドアを閉めた。

 

 


しばらくジムでは会うけど、それ以上は避けてLINEもしなくなった。

今はもうジムで会っても、見て見ぬふり。話もしない。


他人なのだから。

 


でも、女はこれで目覚めてしまう。
最中の自分が自分ではないようで、それが快感だった。
普段真っ当な人間のふりをしている為のストレスを発散させるかのようだった。

 

背徳感が快感になっていたんだと思う。

 

もともと依存しやすい傾向があり、マゾヒスト的要素がある女は後戻りできそうになかった。

 

 

 

きっかけ、夏の終わり

 

就職して、趣味に没頭して、恋ってなんだろう。

 

どういう人が好きなのかもわからなかった女、25歳の夏の終わりの話。

 

 

まだ通い始めたばかりのフィットネスジムで、ナンパをされた。

その日もいつも通り仕事帰りに寄り、好きなバンドのTシャツを着て筋トレをしていた。

 

気のせいか、自意識過剰か、なんだか目が合う人がいる。

気にしないふりをして移動すると、なぜかついてきていた。隣で筋トレを始める男。もちろん女もそこでスクワットを始める。

 

「あの〜、いつから通ってるんですか?」

あちらのタイミングで、突然話しかけてきた。

 

「あ〜、1週間前くらいですかね?」

 

なんだこいつはと思いながらも、ふわっと答える。なぜか質問攻めにされ、家が近いということがわかると一緒に帰ることになった。 特に拒む理由もなかった。

こんな事もあるのか、と少しワクワクしていたのもあった。
話を聞けば、33歳の都内勤務の会社員、聞いたことのある会社だった。まだまだ細めのライトユーザー、運動不足解消くらいだったんだろう。

 

 

太っている女に対して
「なんで通い始めたの?」
なんて聞くので
「ダイエットですよ」
と答えれば
「ダイエットの必要ある!?」
驚いていた。
言われた女も内心驚いていたけど。

 

太った女が好きな男だった。連絡先を交換すると、その後すぐデートに誘われた。2回くらいは断ったけど、なん度も誘ってくるしジムでは会ってしまうし、1回行けばいいかなと誘いに乗った。

 

 

まだ半袖で出かけられる陽気だったあの日は、男が車で迎えにきてくれた。
車の中ではAKB48恋するフォーチュンクッキーが流れていた。

 

「これ親の車だから」

 

実家住みで、親の車、かぁ。
お互いの仕事の話とか、していたと思う。話しながら少しドライブをしていたようで、陽が沈み出した頃にお台場に着いた。

 

 

適当に話しながら歩いていると、
「色白いね」
男は女の腕をさらりと触る。

 

 

女はなにかを理解したようだった。

 

 

 

 


適当に食事を済ませ、外に出るともう完全な夜でイルミネーションがキラキラしていた。食事中もなにを話したか覚えていない。楽しくはなかった。

肩がぶつかるくらい近くにいて、気がつけば自然と手首をつかまれながら歩いていた。

 

 

レインボーブリッジと東京タワーが見える人気のない場所に着くと、隣いたはずの男が後ろから体を密着させてきた。

流れに身を委ねた女は、そのまま耳を舐められ少し息を漏らしながらも、冷静にレインボーブリッジ越しの東京タワーを眺めていた。

 


「どうしたいの?」
「彼氏になりたい」

 

 

今は彼氏とか考えられないと言えば、今じゃなくてもいずれなれればと言う。そんな風には思えなかった。

 

再び耳を舐め始め、女の顔を自分の方へ向かせるとキスをした。女もすんなり受け入れる。

 

 

「ここでいいの?」

 

 

こんな風に言うのは生まれて初めてだった。男もなにかを確信し、また女の手首をつかんで歩いて車に乗せるとホテルへ向かった。

 

ホテルへ向かう車内で、前の彼氏と別れてから1年以上セックスをしてないからできるかわからないと話をした。

ちなみに前の彼氏としたのが初体験で、その時したっきりしていなかった。童貞の元彼との初体験はもうそれは最悪なもので、セックスなんてもうしないと思ってすぐに別れたからだ。

 


そんな話をしているとホテルに着いて、部屋に入るなりキスをされた。

立ったまま力強くキスをしてくるので、顔を後ろに倒さないといけなくて首が痛かった。胸が大きいね、とどこか満足そうな男だった。太ってないよ、そう言われても全然嬉しくなかった。


完全なる好奇心だけで、1年以上ぶりに人生2度目のセックスをしようとしていた。

 

 

 

 

結果的には失敗だった。全く入らなかったし、男のそれをどうにかしてあげたくても女にはなんの技術もなかった。

もう会うこともないだろうと思いながら、家まで送ってもらう。車の中では相変わらずAKB48が流れていた。

 

自分じゃない人になったようだった。今までだったら絶対にしてこなかった事を、好奇心で流れに身を任せて受け入れてみた。興奮していた。

 

思えば、これがきっかけだった。